「土地・建物の相続、どうすればいいの?」~不動産の相続手続きについて~

こんにちは。
相続遺言専門 行政書士宮武事務所の代表、行政書士の宮武勲です。

相続は、亡くなられた方の遺産を相続するものですが、亡くなられた方が土地や家屋等の不動産を所有しており、それらを相続される方も多いのではないでしょうか。

本記事では、不動産を相続される方の参考に少しでもなればと思い、不動産の相続手続きのやり方について説明させていただきます。


(相続登記には関しては、法務局の取扱いに基づく一般的なやり方を記載しております。詳細又は個別具体的なやり方については、必要に応じ、法務局又は司法書士に確認・相談されることをお勧めします。)

1 はじめに

亡くなられた方(被相続人)の不動産を、相続人名義にするためには「相続登記」が必要となります。
登記は、どこに、どのような土地又は建物があり、誰がどのような権利を有しているのかを公示するもので、登記所(法務局等)が記録をすることによって行います。
登記により、不動産の権利関係が一般的に明らかとなりますので、不動産の売買や不動産の所有に関するトラブル等の際に、自己の不動産である旨を主張することができます
登記していないと、①所有に関するトラブル発生の可能性があり、トラブルの際に自己の権利を主張できない、②不動産を売却できない、③登記しないまま相続が繰り返された場合、いざ登記する際に手続きが煩雑となる、④第三者が書類等を偽造して売買を行うリスクがある等の理由から、登記しておいた方がよいでしょう

相続登記は、令和6年(2024年)4月1日から義務化されます。義務化は、所有者不明の土地の問題等が背景となっており、義務化以前に相続した不動産も対象となります。正当な理由がないのに、相続を知ってから3年以内に相続登記の申請をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
これらのことからも、相続登記はした方がいいと思われます。

2 不動産の調査

被相続人が所有していた不動産を把握するために、登記事項証明書(登記簿)、権利証、固定資産税納税通知書、売買契約書等を探します。
これらがあれば、それら書類に関わる不動産の所有関係はある程度は分かりますが、見つかった書類以外の不動産を所有していた可能性もあります。
そのような場合は、「名寄帳(なよせちょう)」を自治体から取得します。名寄帳は、名義人の(一つの自治体における)所有不動産の全てを一覧表にしたもので、これを取得すれば、相続人が把握していない不動産や未登記物件も判明します

「固定資産評価証明書」を取得した場合でも、名義人の所有不動産の一覧を確認することはできますが、課税対象外の不動産は記載されていないので、名寄帳を取得して確認する方がよいでしょう。
しかしながら、名寄帳、固定資産評価証明書ともに、一つの自治体における所有不動産の一覧なので、他の自治体に所有不動産があるかどうかまでは分かりません。

名寄帳、固定資産評価証明書とも、相続人が取得の申請をすることができます。
また、両方とも不動産の評価額が記載されていますが、これは登記申請に必要な登録免許税の計算の根拠となり、また遺産分割協議の目安として活用することができます。

3 相続登記の申請

(1)申請人

遺産分割協議による相続の場合は、相続人全員で申請しなければなりません。
法定相続分による相続の場合は、各相続人が単独で申請することができます。
遺言による相続の場合は、不動産を相続する相続人が単独で申請することができます。ただし、遺贈の場合は、不動産を取得する人と遺言執行者(遺言執行者がいない場合は相続人全員)とで申請することが必要です。
申請は、登記の専門家である司法書士に依頼して、司法書士を代理人として行うこともできます。

(2)申請先・方法

不動産を管轄している登記所(法務局等)に申請します。不動産の所在地によって管轄が決まっており、法務局のホームページで確認することができます。
申請は、登記所の窓口でもできますが、郵送でもできます。マイナンバーカードをお持ちの方は、オンライン申請もできます。

(3)必要書類等

以下の書類等を収集し、提出することが必要となります。
①登記申請書
 法務局のホームページからダウンロードできます。相続人や不動産に関する事項等を記載します。
②被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本
③相続人の戸籍謄本又は抄本
④被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
⑤不動産を相続(取得)する人(新しく登記名義人になる人)全員の住民票
⑥遺産分割協議書又は遺言書

 遺産分割協議による相続の場合は、遺産分割協議書及び法定相続人全員の印鑑証明書が必要です。遺言書による相続の場合は、遺言書が必要です。自筆証書遺言の場合は検認済みのものでなければなりません。法定相続分で相続する場合は、遺産分割協議書も遺言書も不要です。
⑦固定資産評価証明書等
⑧登録免許税

 固定資産評価証明書等に記載された不動産の評価額の合計×1000分の4を支払う必要があります。収入印紙を郵便局や法務局で購入して、①登記申請書の収入印紙貼付台紙に貼り付けて納付します。なお、不動産の評価額が100万円以下の土地等の場合は、令和7年(2025年)3月31日までは免税となります。免税措置を受ける場合、①登記申請書にその旨を記載する必要があります。
 

②被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本、③相続人の戸籍謄本又は抄本は、登記所で交付してもらえる「法定相続情報一覧図の写し」があれば不要です。「法定相続情報一覧図」とは、登記所(登記官)が被相続人と相続人の関係(法定相続人)を証明するものです。しかしながら、「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受けるためには、上記の戸籍謄本・抄本などが必要なので、いずれにせよ戸籍謄本・抄本は取得しなければならないことになります。

提出した戸籍謄本等を返却してほしい場合(「原本還付」といいます)、「相続関係説明図」を提出する必要があります。なお、原本還付を希望する場合は、返却してほしい戸籍謄本等を全てコピーして、コピーしたものに「右は原本と相違ありません」等と記載の上、記名押印して、原本とともに提出することが必要となります。

上記の他、代理人による申請の場合は、委任状が必要となります。

4 登記の完了

提出書類に不備等があれば、登記所から連絡がくるので、それに応じて補正(訂正)又は取り下げをします。

登記が完了すると、登記完了証及び登記識別情報通知が発行されます。前者は、登記が完了したことを証明するだけのものですが、後者は、登記名義人を識別するための非常に重要な情報です。登記識別情報は12ケタの暗証番号のようなものですが、登記申請の際の本人確認として必要なもので、従前の登記済証(権利証)に替わるものです。本情報は、通知を受けた本人が失念・紛失したり、他人に知られるリスクもあることから、本情報の失効の申出ができる他、登記申請の際に本情報の通知を希望しないこともできます。

なお、登記が完了しても、登記事項証明書(登記簿)は交付されませんので、名義変更完了の確認等で必要な場合、自分で取得する必要があります。窓口、郵送又はオンラインでの取得の申請ができます(オンライン申請の場合、受取は窓口又は郵送)。

5 おわりに

不動産の相続手続きは、不動産の調査から相続登記の申請まで、 収集・作成する書類が多く、手間と時間がかかります。相続登記は、前述のとおり、トラブル防止等のためにやっておいた方がよいですが、申請書類は正確に作成する必要があります。登記に関してご不安な方は、法務局又は司法書士に相談・依頼するのも一案です。

当事務所は、戸籍謄本等の取得、遺産分割協議書の作成などの必要書類の収集を含め、不動産の相続手続きを一括してサポートさせていただきます(相続登記は提携司法書士が担当させていただきます)。相続遺言専門の行政書士の宮武勲が全てのお客様を担当させていただきます。

お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

行政書士 宮武 勲(みやたけ いさお)

行政書士 宮武 勲(みやたけ いさお)

行政書士宮武事務所の代表行政書士。香川県の田舎育ち。慶応大学卒。
陸上自衛隊の幹部自衛官として長く勤務し、戦車中隊長、防衛省中枢での勤務、外務省出向、フィリピン台風への災害派遣等を経験。1等陸佐(大佐)で退官。
「人の身近なことで役に立ちたい」という思いと父を亡くしたときの経験から、相続遺言専門の行政書士として開業。相続手続や遺言作成の他、セミナーや無料相談の開催、中野区の相談員も務める等、相続遺言でお困りの方をサポートしている。遺族年金・障害年金等の手続・相談ができる社会保険労務士も兼ねる。
ご高齢の方や障がいのある方を支えたいと思い、社会福祉協議会の臨時職員や介護士として、それらの方々の生活支援や介護、ボランティア活動も行っている。
趣味は旅行・社会科見学、好きな食べ物はさぬきうどん、好きな動物は犬・猫・ハムスター。