「父が亡くなり、母が認知症・・・」~相続人に認知症の方がいる場合の相続手続きについて~

こんにちは。
相続遺言専門 行政書士宮武事務所の代表、行政書士の宮武勲です。

「父が亡くなり、母が認知症・・・」のように、認知症である相続人をご家族に持つ方もおられるのではないでしょうか。
認知症の方は、一定の行為が制限され、意思決定等にサポートが必要であったり等するので、ご家族の方は相続手続きが本当にできるのかと、ご心配のことと思います。

本記事では、相続人に認知症の方がいる場合の相続手続きについて、ご説明させていただきます。

1 認知症である相続人の遺産分割協議の参加の可否

相続手続きにあたって、重要となるのは遺産分割協議です。
遺産分割協議は、相続人全員で、誰にどの遺産をどのように分割(配分)するかを話し合って決めるものであり、遺産分割協議を経て、初めて財産を「分割」することができます。
このため、認知症である相続人が、遺産分割協議に参加できるか否かが重要になってきます。

実は、遺産分割協議をしなくとも、法定相続分で相続することは可能です。
しかしながら、相続財産は、法定相続分に従い、相続人間で共有された状態となります。共有状態のままだと、財産を自由に使うことには制限があり不都合です。不動産であれば、相続人全員の合意がないとその不動産全部を売却することができませんし、預貯金は遺産分割の対象となっておりますので、相続人一人では引き出すことができません(ただし、相続開始時点の預貯金額×1/3×法定相続分の範囲であれば、相続人一人でも引き出すことができます。上限は金融機関ごとに150万です、)。
このため、共有状態を解消し、各相続人が相続財産を自由に使えるようにするためには、遺産分割協議が必要となります。

認知症である相続人が遺産分割協議に参加できるか否かは、当該相続人の意思能力の有無にかかってきます。
「意思能力」とは、自分がした行為の結果を判断できる能力のことで、この能力が無い人が行った契約等の権利・義務が生じる行為(法律行為)は、無効になります。
認知症だからといって、ただちに意思能力がないと判断されるわけではありません。
遺産分割協議に参加できる意思能力の有無は、遺産分割協議の内容等を考慮して、認知症である相続人が遺産分割の結果を判断できるか否かについて、個別具体的に判断されることとなります。その判断は、一般の方では難しいので、医師の診断等によって行うことになります。
意思能力があると判断されれば、問題なく遺産分割協議に参加できます。
一方、意思能力がないと判断されれば、遺産分割協議は参加することはできません。仮に参加しても、その協議は無効となります。

2 相続人の代理として成年後見人による遺産分割協議への参加

認知症である相続人に意思能力がない場合、成年後見人(法定後見人又は任意後見人)がついていれば、後見人が後見される方(被後見人)の代理として、遺産分割協議に参加することになります。ただし、後見人も相続人である等、後見人と被後見人の利益が競合する場合(利益相反)は、家庭裁判所によって選任された後見人を監督する後見監督人が、被後見人を代理します。後見監督人が選任されていなければ、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。

認知症である相続人に成年後見人がついていない場合は、法定後見人の選任の家庭裁判所に申し立てる必要があります。法定後見人は、弁護士・司法書士・社会福祉士等の専門家が選任されるケースが大半であり、本人の親族を後見人候補として希望することもできますが、選任されないこともあります。つまり、希望どおり家族等が選任されるとは限りません。
法定後見人が選任されれば、上述したように、被後見人の代理として遺産分割協議に参加します。
法定後見人は、 本人の保護・支援のために本人の利益になることを行いますので、遺産分割協議は、法定相続分を考慮したものになります。一方で、本人の利益になることしか行えませんので、特別の事情がない限り、被後見人の相続分を法定相続分より少なくして、他の相続人の相続分を増やすといったことは、難しいでしょう。 つまり、法定後見人がいても、自由に遺産分割できるわけではありません
なお、法定後見人が一旦選任されれば、本人が死亡または本人の能力が回復するまで、代理人として業務を行います。法定後見人に専門家が選任された場合は、報酬の支払いが必要となります(親族が選任された場合も、報酬を求めることはできます)。

3 おわりに

上述のとおり、法定相続分によらない相続のためには、遺産分割協議が必要であり、認知症である相続人が遺産分割協議に参加するには、意思能力が必要です。そして、意思能力がない場合は、成年後見人が相続人の代理として遺産分割協議に参加することになりますが、成年後見人がついていない場合は、その選任を申し立てるという手続きになります。成年後見人が選任されても、自由に遺産分割ができるわけではなく、専門家が選任された場合は報酬も必要となり、それは本人が死亡または回復するまで続くので、成年後見人の選任を申し立てるか否かは慎重に検討する必要があります。

当事務所は、相続手続きを一括してサポートさせていただいております。遺産分割協議書の作成も行いますし、遺産分割協議のお手伝いもいたします。相続遺言専門の行政書士の宮武勲が全てのお客様を担当させていただきます。成年後見人の申し立てが必要な方は、専門家である弁護士・司法書士を紹介させていただきます。
お気軽にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

行政書士 宮武 勲(みやたけ いさお)

行政書士 宮武 勲(みやたけ いさお)

行政書士宮武事務所の代表行政書士。香川県の田舎育ち。慶応大学卒。
陸上自衛隊の幹部自衛官として長く勤務し、戦車中隊長、防衛省中枢での勤務、外務省出向、フィリピン台風への災害派遣等を経験。1等陸佐(大佐)で退官。
「人の身近なことで役に立ちたい」という思いと父を亡くしたときの経験から、相続遺言専門の行政書士として、第二の故郷である東京の中野で開業。高齢者の方の生活支援・ボランティア等の活動も行っている。
趣味は旅行・社会科見学、好きな食べ物はさぬきうどん、好きな動物は犬・猫・ハムスター。