「遺言って書いておいた方がいいの?」 ~遺言を作成するメリット、作成しておいた方が良いケース~

こんにちは。
相続遺言専門 行政書士宮武事務所 代表、行政書士の宮武勲です。

昨今の終活ブームにより、遺言やエンディングノート等について見たり聞いたりする機会が増えてきていると思います。
遺言は、遺言される方が、ご自分の財産を相続させるため等に作成するものということは、皆様ご承知かとは思いますが、「自分が遺言を書いた方がいいのかどうか、よく分からない」という方もおられるのではないでしょうか。

そんな方のご参考に少しでもなればと思い、本記事では、遺言を作成するメリット、作成しておいた方が良いケースについて、ご説明させていただきます。

1 遺言を作成するメリット

遺言がなくても、民法で定められたご家族又はご親族(法定相続人)に、民法で定められた割合(法定相続分)で遺産は相続されます。
しかしながら、遺言を作成することで、ご自分の望む特定の方に、特定の財産又は特定の割合で、相続させることができます。つまり、遺言があれば、ご自分の希望通りに相続を実現することができます。例えば、「配偶者に全ての財産を相続させたい」、「疎遠になった家族よりも、長年世話をしてくれる家族に多めに財産を残したい」、「親族ではないが、お世話になった知人がいるので、財産を渡したい」等の希望をかなえることができます。

また、遺言があることで、ご家族・ご親族が円滑に相続することができます。先ほど、「遺言が無くても、ご家族又はご親族に、法律で定められた割合で遺産は相続される」旨述べましたが、この段階では、遺産は相続された方全員の共有状態となっており、財産を自由に使うことには制限があります。例えば、預貯金1000万円を2人の相続人で2分の1ずつ相続しても、共有状態のままでは、500万円に分割されているわけではないので、自由に使うことはできません。誰にどの遺産を配分するかを決める遺産分割協議を経て、初めて相続人が財産を自由に使うことができるようになります。遺産分割協議は、相続人全員で行い、合意することが必要ですが、音信不通の相続人がいたり、協議の内容に反対する相続人が一人でもいると、相続手続きがストップしたり、相続争い(「争族」)に発展したりする可能性があります。しかし、遺言があれば、遺産分割協議をそもそも行う必要がなく、遺言の内容通りに、相続人が相続手続きを行えば良いので、円滑に相続でき、相続人の負担も軽減されます。特に、「争族」に発展する可能性が低くなるので、遺言される方が亡くなられた後、残されたご家族・ご親族が仲たがいせず円満でいられるというのは、大きなメリットといえるでしょう。

ちなみに、エンディングノートは想いを残すことはできますが、法的効力がないので、エンディングノートをもって相続手続きを行うことはできません。

2 遺言を作成しておいた方が良いケース

次に、遺言を作成しておいた方が良いケースについて、述べさせていただきます。基本的には、上述したメリットを活かしたい場合は、作成しておいた方が良いケースとなりますが、特定の家族関係等にある方は、遺言がないと、ご自分の望む方に財産を残すことができない場合がありますので、是非とも作成しておいた方が良いと思われます。

① 相続人が円満かつスムーズに相続できるようにしたい、相続手続きの負担を軽くしてあげたい

相続人・相続財産を遺言により予め決めておくことで、遺産分割協議に伴う「争族」を避け、相続人が仲たがいせず円満かつスムーズに相続でき、相続手続きの負担を軽減することができます。

② 家族の特定の方に多くの財産を与えたい、又は特定の財産を与えたい

「子供は十分経済力があるので、残される配偶者に全ての財産を残したい」、「長女は自分の面倒をよく見てくれたので、多めに財産を与えたい」、「跡継ぎの長男には不動産を、次男には預貯金を与えたい」等、ご自分の望む方に、望む財産を与えたい場合は、遺言を作成しておく必要があります。

③ 夫婦に子供がいない

お子様がいない場合、亡くなられた方(被相続人)の親や兄弟姉妹までもが相続人になることがあります。遺言を作成しておけば、配偶者等特定の方に、全ての財産を相続させることができます

④ 再婚しているが、前の配偶者との間に子供がいる(配偶者以外との間に子供がいる場合を含む)

再婚していても、現在の配偶者との間のお子様のみならず、前の配偶者のお子様も相続人となります。配偶者以外との間に生まれたお子様も、同様に相続人となります。ご自分が亡くなられた後、これら普段顔を合わせていない相続人が、遺産分割協議を円満に行うことはなかなか難しく、「争族」に発展する可能性が高いと言えます。遺言を作成しておけば、遺産分割協議をする必要はありませんし、特定の方(例えば、現在の配偶者との間のお子様だけ)に財産を相続させることができます。

⑤ 身の回りの世話をよくしてくれる、子供の配偶者又は知人に財産を与えたい

お子様の配偶者や知人は法定相続人とならないので、遺言がないと、財産を与えることができません

⑥ 内縁の妻(夫)がいる

配偶者は法定相続人となりますが、内縁の妻(夫)は法定相続人とはならないので、遺言がないと、財産を与えることができません

⑦ 子供と孫がいるが、子供の内に既に亡くなった者がいる

お子様は全員相続人となりますが、お子様の内に亡くなられた方がいる場合は、その亡くなられた方の子、つまりお孫様が相続人となります。このお孫様同士、又このお孫様と存命のお子様同士のご関係(おじ・おばと甥・姪)が普段から良好であれば、遺産分割協議も円満に行われる可能性もありますが、そうでなければ協議が難航し「争族」となる可能性があります。遺言を作成しておけば、遺産分割協議をする必要はありません。

⑧ 相続人同士の仲が良くない

お子様同士の仲が悪い等、相続人同士で仲が良くない場合、遺産分割協議が難航し「争族」となる可能性があります。遺言を作成しておけば、遺産分割協議をする必要はありません。

⑨ 連絡がすぐにとれない又は連絡をしばらくとっていない家族(消息不明を含む)がいる

お子様等の相続人が海外に居住されていたり、疎遠になっていたり、又消息不明であったりする場合、遺産分割協議は全員で行わなければならないので、協議を行うこと自体が難しくなります。遺言を作成しておけば、遺産分割協議をする必要はありません。

⑩ 個人で事業をやっており、それを家族に継いでもらいたい

個人の事業を経営したり、農業をやっている場合等は、財産を複数の相続人に相続させてしまうと、事業の継続が困難となる場合があります。このため、ご自分の望む後継者が集中的に財産を相続できるよう、遺言を残しておいた方が良いです。

⑪ 相続財産の種類・金額が多い、分割しにくい財産がある

相続財産は、預金の解約手続き不動産の名義変更等の手続きが必要となりますが、遺言がないと、その手続きに相続人全員が関わる必要があるので、手間と時間がかかり非常に大変です。遺言を作成し、遺言内容を実現することのできる「遺言執行者」を定めておけば、遺言執行者が相続人を代表して手続きを行うことができます。

また、不動産や、美術品・骨董品・宝飾品等、分割しにくい財産がある場合、相続により共有状態になってしまうと、その使用・売却等が自由には行えないので、遺言を作成しておくことで、誰が取得するか明確にすることができます。

この記事を書いた人

行政書士 宮武 勲(みやたけ いさお)

行政書士 宮武 勲(みやたけ いさお)

行政書士宮武事務所の代表行政書士。香川県の田舎育ち。慶応大学卒。
陸上自衛隊の幹部自衛官として長く勤務し、戦車中隊長、防衛省中枢での勤務、外務省出向、フィリピン台風への災害派遣等を経験。1等陸佐(大佐)で退官。
「人の身近なことで役に立ちたい」という思いと父を亡くしたときの経験から、相続遺言専門の行政書士として、第二の故郷である東京の中野で開業。高齢者の方の生活支援・ボランティア等の活動も行っている。
趣味は旅行・社会科見学、好きな食べ物はさぬきうどん、好きな動物は犬・猫・ハムスター。