こんにちは。
相続遺言専門 行政書士宮武事務所の代表、行政書士の宮武勲です。
別記事「『相続手続き、何をすればいいの?』 ~相続手続きの流れについて~」について、相続手続きには非常に多くの手続きがある旨説明させていただきました。
その中でも、皆様にとって頭を悩ましかねないのが、遺産分割協議ではないでしょうか。
「そもそも遺産分割協議とは何なのか」、「遺産分割協議のやり方が分からない」という方も多いかと思います。
そんな方のご参考に少しでもなればと思い、本記事では、遺産分割協議の概要・やり方について、ご説明させていただきます。
1 遺産分割協議とは
ご家族が亡くなられたときに、相続が開始されます。亡くなられた方(被相続人)の財産を相続する権利のあるご家族等を「法定相続人」と言いますが、この法定相続人が、民法で定められた割合(法定相続分)に従い、相続財産を「共有」することになります。「共有」であり「分割」はまだされていないので、財産の自由な使用には制限があります。
遺産分割協議とは、相続人全員で、誰にどの遺産をどのように分割(配分)するかを話し合って決めるものであり、この協議を経て、初めて財産を「分割」することができます。
なお、遺言がある場合は、遺言の内容に基づく分割が優先されますので、遺産分割協議は行う必要はありません。ただし、遺言がある場合でも、遺産分割協議を行い、相続人全員が合意すれば、遺言の内容と異なるやり方で遺産を分割することはできます。
2 遺産分割協議の参加者
遺産分割協議は、相続人全員が参加して行う必要があります(相続放棄した相続人は除きます)。
相続人のうち、一人でも参加していない者がいる場合は、その協議は無効となります。
このため、協議を行う前に、相続人調査を行い相続人を確定しておく必要があります。
協議は必ずしも全員が一堂に会して行う必要はありませんが、相続人が海外に居住していたり、疎遠になっていたり、消息不明であったりする場合、協議を行うこと自体が難しくなる場合があります。
相続人に、未成年者、認知症の方、行方不明者がいる場合は、親権者又は特別代理人、成年後見人、不在者財産管理人等が本人の代わりに協議に参加することになります。
3 遺産分割の対象となるもの
遺産分割の対象となるものは、被相続人の現金、預貯金、不動産(土地、建物)、株式、投資信託、債権、自動車、美術品・骨董品・宝飾品、ゴルフ会員権、借地権・借家権・抵当権等の財産です。
また、被相続人が生前、相続人に対し、結婚資金、住宅購入費、事業用資金等、多額の贈与をしていた場合は、通常、それらも相続財産とみなして(本来の遺産にその贈与額を加え、相続財産の総額とします。当該贈与を「特別受益」といいます。)、遺産を分割することになります。
なお、金銭債権(預貯金は除く)及び金銭債務は相続財産ではありますが、遺産分割の対象とはなりません。法定相続分により、各相続人が引き継ぎます。
生命保険金、死亡退職金等は相続財産ではないので、遺産分割の対象となりません。ただし、これらを受け取った相続人は、本来の相続分に加えより多く財産を取得することになるので、遺産分割協議においては、相続人間で不公平感を生じないような配慮が必要です。
一部の遺産だけを分割の対象として協議することもできますし、協議を行った後、新たな相続財産が見つかれば、再び協議を行うこともできます。
しかしながら、相続財産をトータルでみて各相続人が相続する財産を検討した方が良く、また、分割の対象としない遺産があると後々トラブルとなる可能性も否定できず、協議を複数回行うのも時間と手間もかかるので、特別な事情がない限りは、全ての遺産を分割の対象とした方が良いでしょう。
そのためには、協議までに相続財産の調査を行い、財産を確定しておくことが必要です(新たな財産が見つかった際の処置としては、遺産分割協議書に、見つかった財産の相続人を予め定めておくやり方もあります)。
4 遺産分割協議のやり方等
「協議」と言いますが、格式ばったものではなくても、誰がどの財産をどのように相続するかについて話し合い、相続人全員の意見が一致すれば十分です。
相続人のどなたかがまとめ役となって進めることが多いかと思いますが、一堂に会する必要はないので、遠方に住んでいる相続人とは電話等により話し合っても構いません。
ただし、相続人全員が合意することが必要なので、相続人同士の仲が良くなかったり、疎遠であったりする場合は、協議が難航する可能性があります。
上述の法定相続分は、相続人がどのような割合で財産を相続するかの基準ですが、これと異なる割合で分割することは、差し支えありません。
民法に「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」とあるように、相続人の様々な事情を踏まえて、どの財産をどのように分割するか決めるべきです。
分割の方法としては、下記の3つがあります。
・現物分割
例えば、不動産は妻に、預金は長男に、株式は二男にというように、個々の財産を誰が相続するかを現物によって決める方法であり、一般的によく行われる方法です。それぞれの財産について、割合や額・量等を指定して分割することもできます。
・代償分割
例えば、不動産を妻が相続して法定相続分以上に多めに財産を相続することになる場合、相続分が少なくなった長男・二男に対し、妻が金銭を支払うというように、現物を相続した相続人が、他の相続人に対して代償金を負担する方法です。現物を相続する相続人が、他の相続人に対して支払うべき金銭を用意できることが必要です。
・換価分割
遺産である不動産を売却し、その売却額を相続人間で分けるというように、遺産を金銭に換えて、それを分割する方法です。不動産等を相続するのが難しい場合や代償分割の代償金が支払えない場合等に行われますが、遺産をどのように売却するか等(売却価格、売却担当者等)について相続人間で決めておく必要があります。
また、遺産分割においては、「寄与分」も留意する必要があります。「寄与分」とは、相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたものがある場合に、法定相続分以上の財産を取得させるものです。例えば、相続人が、被相続人の療養看護等を行った場合、被相続人の事業に無給で従事した場合等が該当します。ただし、あくまで「特別の寄与」ですので、被相続人の家族・親族として通常期待されるような協力・扶養を相続人が行っただけでは該当しません。
5 協議の成立・不成立
相続人全員が分割の内容に合意すれば、協議が成立したことになります。
その後、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は必ず作成しなければならないものではありませんが、相続財産の名義変更等の相続手続きをスムーズにするため(遺産分割協議書が無いと行えない手続きもあります)、また後のトラブル等を避けるために、作成しておくべきです。
協議において相続人の意見が一致しない、一人でも分割の内容に合意しない者がいる等協議がまとまらない場合、また相続人全員が集まらず協議自体ができない等の場合は、協議は不成立です。
遺産分割するためには、家庭裁判所に、遺産分割の調停を申し立てることになります。
調停は、調停員が仲立ちとなった話し合いによる解決方法です。調停が不成立の場合は、審判手続に移行します(当初から下記の審判を申し立てることもできますが、調停から行うのが一般的です)。
審判では、家庭裁判所の裁判官が、上述の民法の規定に基づき、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して」、各相続人の相続分に反しないように分割します。
6 おわりに
遺産分割協議は、相続手続きの中でも最も重要なものと言えるでしょう。相続人調査・相続財産調査も遺産分割協議を開催するために行いますし、相続財産の名義変更等も遺産分割協議の結果に基づいて行うことになるからです。
協議は、相続人全員で、誰にどの遺産をどのように分割するかを話し合って決めますが、相続人の皆様が納得できるようにする必要があります。お互いの事情に配慮しつつ、また亡くなられた方のお気持ち等も推察・尊重すれば、協議も円滑に進むかもしれません。
当事務所は、遺産分割協議や遺産分割協議書の作成をサポートさせていただきます。相続遺言専門の行政書士の宮武勲が全てのお客様を担当させていただきます(相続人間で対立している等法的紛争状態にある、またはその可能性がある場合は、弁護士を紹介させていただきます。)。
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