「遺言ってどう書けばいいの?」~自筆証書遺言の書き方について~

こんにちは。
相続遺言専門 行政書士宮武事務所の代表、行政書士の宮武勲です。

昨今の終活ブームにより、遺言やエンディングノート等について見たり聞いたりする機会が増えてきています。

遺言があれば、ご自分の希望通りに相続を実現することができ、ご家族・ご親族が円滑に相続することができるという大きなメリットがあります(詳しくは、別記事「『遺言って書いておいた方がいいの?』」 ~遺言を作成するメリット、作成しておいた方が良いケース~)をご覧ください)。

皆様の中には、「遺言を書いてみたいけれど、書き方が分からない」という方もおられるのではないでしょうか。

自分で書く遺言を「自筆証書遺言」と言いますが、本記事では「自分で遺言を書いてみたい」という方の参考に少しでもなればと思い、自筆証書遺言の書き方についてご説明させていただきます。

(遺言の種類、公正証書遺言と自筆証書遺言の違いについては、別記事「遺言の種類について」「公正証書遺言と自筆証書遺言の違い(メリット・デメリット)について」をご覧いただければと思います。)

遺言書サンプル

1 自筆証書遺言の要件

民法に自筆証書遺言の要件が、下記のとおり定められています。これら要件を全て満たさなければなりませんので、一つでも要件を欠くと無効になる可能性があります。
遺言は、書いた人(遺言者)、書いた日(作成日)、書かれている内容(相続人・相続財産等)が正確で特定できることが必要かつ極めて重要です。つまり、特定できない、他と区別できない、疑義がある等の書き方は無効になる可能性があるということを念頭に置く必要があります。


全文が自書されている
 原則、遺言書の全文を自書(自筆)しなければなりませんので、パソコン等による作成は  認められていません。ただし、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合は、その目録については、自書する必要はありません。目録とは、不動産や預貯金等の財産のリストのことですが、様式は特に定めはなく随意です。目録には、各ページに署名と押印が必要となります

作成日付が自書されている(遺言書サンプルのA参照)
 遺言書を作成した日付が特定できるように記載する必要があります。「○年○月吉日」のような書き方では、日付が特定できません。「私の80歳の誕生日」のような書き方は特定できるとされていますが、疑義が生じないように「○年○月○日」と記載するのが確実です。

署名がある(遺言書サンプルのB参照)
 自分の名前を書きます。通称、ペンネーム、氏・名のいずれか等でも遺言者が特定できればよいとされていますが、戸籍上の氏名を書くのが確実です(遺言を法務局に保管してもらう「自筆証書遺言保管制度」を利用する場合は、戸籍上の氏名でなければなりません。)。 

押印がある(遺言書サンプルのC参照)
 実印でなくても認印でもかまいません。 

遺言書の作成に用いる筆記具は、長期間保存できるよう、また改ざん等がされにくいよう、ボールペンや万年筆等を用いた方がいいです。
遺言を書く用紙は、特に定めはないのでメモ用紙やチラシの裏等でもかまいませんが、長期間保存できるよう、また疑義を生じないように、相応の用紙を用いた方がいいです(自筆証書遺言保管制度を利用する場合は、A4サイズで、文字の判読を妨げるような地紋、彩色等のないものを使うよう求められています。)。

なお、ご夫婦等2人以上の方が同一の証書で遺言を作成することはできません。共同で遺言を作成すると、各人の遺言の自由、遺言の撤回の自由が制約されるからです。

2 本文の内容・書き方

(1)本文の内容

財産を誰にどのような割合で相続させるか(相続分)、どのように分けるか(遺産分割方法)についてのほか、以下を内容とすることができます。

①子の認知
②相続人の廃除
③遺贈(亡くなられる方が財産を譲ること)
 ※法定相続人以外の方(お子様の配偶者、知人等)に財産を残す場合等が該当します。
④寄附
⑤特別受益の持戻しの免除    
 ※亡くなられた方が生前、相続人に対し、結婚資金、学費、住宅購入費、事業用資金等、多額の贈与をしていた場合は、通常、それらも相続財産とみなして遺産を分割しますが(特別受益)、遺言により遺産に含めないとすることができます。
⑥祭祀主宰者(先祖のお墓を守り供養する人)の指定  
⑦遺言執行者(遺言の内容を実行する人)の指定   等                       

葬儀・納骨の希望、ご家族へのメッセージ等は、書いても法的効力はありません(ご家族へ想いを残すことはできます)。

(2)書き方(遺言書のサンプルD参照)

本文の内容のうち、財産を誰にどのように相続させるかの書き方が、多くの方の関心事項だと思いますので、当該事項について説明させていただきます。

財産を相続する人(相続人)を特定するため、相続人の続柄・氏名・生年月日を書きます。
相続財産を特定するため、不動産はその所在等について登記簿(登記事項証明書)通りに、預貯金は金融機関名・支店名・口座の種類・番号・名義を漏れなく正確に記載します。株式等の有価証券、自動車や美術品・骨董品・宝飾品等の動産についても、それらを特定できるような情報を記載します。
そして、相続させる場合は「相続させる」と書きます。「与える」「譲る」等の表現は、意味が異なり疑義が生じますので使わないようにしてください。お子様の配偶者、知人等法定相続人以外に財産を残す場合は、「遺贈する」と書きます。

相続財産については、目録や、不動産であれば登記事項証明書、預貯金であれば通帳の写し等を「別紙」として、本文に「別紙一の不動産及び別紙二の預貯金を○○に相続させる」等の記載でも構いません。この場合、上述したように、別紙にはそのすべてに自書・押印が必要となります。

(3)訂正する場合(遺言書サンプルのE参照)

自筆証書遺言の訂正については、民法に「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」と定められています。
遺言書サンプルのEのように、遺言書の余白に訂正場所・内容・氏名を、訂正場所に取消線・正しい語句を書き押印します。訂正場所に取消線・正しい語句を書き訂正印を押すだけでは不十分です
上記のやり方が正しいやり方ではありますが、疑義が生じない最も確実なやり方は、遺言書を書き直すことです。

3 作成にあたっての留意事項

(1)遺留分

一定の相続人に対し保障される相続財産の割合を「遺留分」と呼びます。例えば、相続人が妻と子の甲・乙の場合、妻は4分の1、子の甲・乙は8分の1ずつの遺留分があります。

遺言によっても、遺留分を侵すことはできません特定の相続人に財産を全く残さない又は遺留分より少ない財産を相続させる旨の遺言を作成したとしても、当該相続人には遺留分の権利があります。このため、当該相続人が、多く財産を相続した他の相続人に対し、遺留分の請求をする等、親族間の紛争に発展しかねませんので、注意が必要です。

遺留分の権利がある相続人は、配偶者、子、直系尊属(父母等)です(兄弟姉妹にはありません)。配偶者と子は常に遺留分の権利がありますが、直系尊属は子がいない場合に限り、権利があります。

(2)遺言に明記していない財産(遺言書サンプルのF参照)

遺言に明記していない財産、例えば家財道具等や、遺言を書いてから取得した財産等については、遺言書サンプルのFのように書いておけば、誰が相続するか明確になります。
相続人にとっても、遺言に明記していない遺産が見つかった場合、このように書かれていれば、見つかった財産について遺産分割協議をする必要がないので、スムーズに相続することができます。

(3)予備的遺言(遺言書サンプルのG参照)

サンプルの第1条と第2条では、財産を妻花子と長男一郎に相続させることとしていますが、遺言作成後、必ずしも遺言者太郎が、相続人の妻花子や長男一郎よりも先に亡くなるとは限りません。

このような場合に備え、相続人が遺言者よりも先、又は事故等で同時に亡くなった場合に、誰に財産を相続させるかを明示しておくのが「予備的遺言」です
サンプルのGのように書いておけば、遺言者太郎の亡くなる以前に妻花子が亡くなっても、遺言を撤回・変更する必要はなく、妻花子が相続する予定であった財産を長男一郎がそのまま相続することができます。

予備的遺言は、相続人が遺言者と年齢が近い場合、相続人が重病である等の場合は、書いておいた方がよいでしょう。

(4)遺言執行者(遺言書サンプルのH参照)

上述したように、遺言執行者の指定も遺言の内容とすることができます。遺言執行者とは、遺言の内容を実行する人のことで、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。

遺言執行者は破産者や未成年者以外は誰でもなることができますので、相続人もなることができます。また、複数名指定することもできます。

相続手続きを行うにあたっては、遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者が預貯金の解約手続き、不動産の登記手続きを単独で行うことができるので、スムーズです。特に、相続人間に対立が生じそうな場合や、相続財産が多く相続手続きが複雑になる場合には、指定しておいた方がよいでしょう
遺言執行者の権限は第三者に委任することができるので、遺言執行者として指定されていた相続人等が、その任務を行うことが難しいようであれば、行政書士・司法書士・弁護士等の専門家に委任することもできます。
なお、遺言執行者に指定された者には、承諾しなければならない義務はありませんので、遺言で指定する際はあらかじめ了承を得ておくことが必要です。

(5)付言事項(遺言書サンプルのI参照)

「2 本文の内容・書き方」のところで、葬儀・納骨の希望、ご家族へのメッセージ等は、書いても法的効力はない旨ご説明させていただきましたが、それらの内容を「付言事項」として書くことはできます。
法的効力はありませんが、ご自分の想いをご家族へ残すことができるので、遺言内容について相続人の理解を得るために書いた方がよい場合もあるかと思います。特に、各相続人の相続する財産がバランスを欠く場合(法定相続分ではない場合等)、相続させる財産が遺留分に満たないような場合等、相続人間に不満・対立が生じそうな場合は、書いた方がよいでしょう。

一方で、相続人に対する遺言者からの不平・不満・恨み等は、書かない方がよいです。書くことによって却って、当該相続人が逆上し、相続人間の対立・紛争を生じかねないからです。

4 遺言の撤回・変更等

遺言は、遺言者が亡くなった際に初めて効力が発生します。逆に言えば、亡くなるまでは効力は発生しませんので、遺言者は遺言を書いた以降も、ご自身の財産を自由に使うことができます
遺言に書かれている財産を処分した場合は、当該財産に抵触する遺言内容については無効となります。  


一度作成した遺言の撤回・変更は自由です。一度遺言を作成したからといって、それにずっと拘束されることはありません。後から遺言を書き直してもかまいません。
なお、複数の遺言がある場合、前の遺言が後の遺言と抵触する場合は、その部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。

5 おわりに

「1 自筆証書遺言の要件」でご説明させていただきましたが、遺言は疑義が生じないように書くことが必要かつ極めて重要です。
せっかく遺言を書いたのに無効になっては元も子もないので、法的要件を満たすようにしなければなりません
また、相続人間で揉めたり対立(「争族」)したりすることなく、円滑に相続できるようにするためでもあります。遺言を書く目的は様々だとは思いますが、残される相続人のことを考えながら書くことは非常に重要だと思います。

なお、遺言の法的有効性という観点では、自筆証書遺言よりも、公証人が作成する公正証書遺言の方がより確実です。本記事の内容の多くは遺言の共通事項なので、公正証書遺言を作成する際にもご活用いただけます(「1 自筆証書遺言の要件」「2 本文の内容・書き方(3)訂正する場合」を除く)。 

当事務所は、自筆証書遺言が法的に無効となる可能性を極限し、相続手続きが遺言者の意図どおりスムーズに行なえるようサポートさせていただきます。また、公正証書遺言作成のサポートもさせていただきます。相続遺言専門の行政書士の宮武勲が全てのお客様を担当させていただきます。
お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

行政書士 宮武 勲(みやたけ いさお)

行政書士 宮武 勲(みやたけ いさお)

行政書士宮武事務所の代表行政書士。香川県の田舎育ち。慶応大学卒。
陸上自衛隊の幹部自衛官として長く勤務し、戦車中隊長、防衛省中枢での勤務、外務省出向、フィリピン台風への災害派遣等を経験。1等陸佐(大佐)で退官。
「人の身近なことで役に立ちたい」という思いと父を亡くしたときの経験から、相続遺言専門の行政書士として、第二の故郷である東京の中野で開業。高齢者の方の生活支援・ボランティア等の活動も行っている。
趣味は旅行・社会科見学、好きな食べ物はさぬきうどん、好きな動物は犬・猫・ハムスター。