こんにちは。
相続遺言専門 行政書士宮武事務所の代表、行政書士の宮武勲です。
別記事「『遺言ってどう書けばいいの?』~自筆証書遺言の書き方について~」において自筆証書遺言の書き方を、「『公正証書遺言って、どう作るの』~公正証書遺言の作成の手順等について~」において公正証書遺言の作成の手順等について説明させていただきました。
遺言を作られた方の中には、「作ったときと状況が変わってしまった」、「急いで作ったので、深く考えていないことがあった」等の理由により、遺言を作り直したいとお考えの方もおられるのではないでしょうか。また、「一度作ってしまった遺言は変えられない」、「遺言に書いた財産は手をつけてはいけないのではないか」等とお思いの方もおられるかもしれません。
本記事では、そのような方々のご参考に少しでもなるよう、遺言の撤回・変更についてご説明させていただきます。
1 撤回・変更の自由
民法に「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」とあり、遺言の撤回・変更の自由が保障されています。一度遺言を作成したからといって、それにずっと拘束されることはありません。
また、遺言は、遺言者が亡くなられたときに、初めて効力が発生します。亡くなるまでは効力発生しませんので、遺言者は遺言を書いた以降も、ご自身の財産を自由に処分することができます。
ただし、遺言に書かれている財産を処分した場合、その処分が遺言内容と抵触することになれば、当該遺言内容は撤回されたとみなされます。例えば、遺言で「不動産を○○に相続させる」と記載していたのに、生前にその不動産を売却してしまえば相続させることができなくなりますので、上記記載は撤回されたことになります。あくまで、抵触する部分のみが撤回されたことになるので、抵触していない部分については引き続き有効です。
2 撤回・変更のやり方
遺言は、その全部を撤回・変更することもできますし、一部だけを撤回・変更することもできます。
撤回・変更する際は、本来の遺言の方式に従って行う必要があります。つまり、自筆証書遺言であれば、 全文・日付を自筆で書き署名捺印する、公正証書遺言であれば、証人2人以上の立会のもと、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口頭で伝え、公証人がそれを筆記して作成する等の要件を満たす必要があります。
公正証書遺言の全部を撤回し、新しい遺言を作成する場合は、「令和〇年〇年〇日〇〇法務局所属公証人〇〇〇〇作成〇年〇第〇〇号の公正証書遺言を全部を撤回し、以下のとおり遺言する」等と記載します。
一部を撤回・変更する場合は、「令和〇年〇年〇日〇〇法務局所属公証人〇〇〇〇作成〇年〇第〇〇号の公正証書遺言のうち、第〇条を以下のように変更する。変更しない部分は、全て原遺言とおりとする。」等とします。
なお、公正証書遺言を撤回・変更する場合、公証人手数料がかかります。
自筆証書遺言の全部を撤回し、新しい遺言を作成する場合は、相続人が混乱しないように古い遺言は裁断する等破棄した上で、新しく作り直した方がよいでしょう。
一部を撤回・変更する場合は、遺言書の余白に変更場所・内容・氏名を、変更場所に取消線・変更後の語句を書き押印します。また、上述の公正証書遺言の例ように「第〇条を以下のように変更する」旨の遺言を作ってもよいでしょう。
自筆証書遺言保管制度を利用している場合は、保管の申請を撤回をして遺言書を返却してもらった上で、上述のように撤回・変更を行うことになります。
公正証書遺言でも自筆証書遺言でも、変更箇所が多い、また一部の変更を繰り返すといった場合には、遺言者本人も相続人も、変更前と変更後の遺言を見比べる必要があり、混乱したり錯誤を生じる恐れがあります。このような場合は、全部を新しく作り直した方が良いでしょう。
撤回・変更は、先に作成した遺言と同じ種類の遺言で行う必要はありません。先に作成した公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回・変更することもできます。ただし、法的に無効の可能性が低い公正証書遺言を、専門家のチェックを受けていない法的に無効の可能性のある自筆証書遺言で撤回・変更するのはリスクがあるので、公正証書遺言で撤回・変更を行う方が無難でしょう。
3 遺言が複数ある場合
遺言が複数あり、前の遺言が後の遺言と抵触する場合は、その抵触部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。分かりやすく言えば、後に作った遺言の方が有効となります。例えば、前の遺言が「不動産をAに相続させる」、後の遺言が「不動産をBに相続させる」となっていた場合、不動産はBに相続されることになります。
一方で、前の遺言と後の遺言で抵触しない部分については、両方とも有効です。例えば、前の遺言が「不動産をAに相続させる」(預貯金に関する記載はなし)、後の遺言が「預貯金をBに相続させる」(不動産に関する記載はなし)となっていた場合は、不動産はAに、預貯金はBに相続されることになります。
前後の遺言で抵触する部分は後の遺言が有効というのは、遺言の種類に関係はありません。つまり、先に公正証書遺言を作っていたとしても、後でそれと抵触する内容を自筆証書遺言で作れば、自筆証書遺言が有効となります。遺言の種類自体に優劣はなく、作られた時期により優劣があるということです。
4 おわりに
冒頭で述べさせていただいたとおり、 遺言の撤回・変更は自由です。
一度作っても、その遺言に拘束されることはなく、作り直しも自由です。遺言に書いた財産の処分も自由です。
撤回・変更する場合も新たに作り直す場合も、所定の方式に従って行う必要があります。ご不安であれば、行政書士等の専門家のサポートを受けられた方がよいでしょう。
当事務所は、遺言の撤回・変更及び作成に必要な手続きについてサポートさせていただきます。自筆証書遺言・公正証書遺言とも、必要書類の収集、 遺言の原案作成などを当事務所が行いますので、お客様に面倒な手続きを行っていただく必要はありません。相続遺言専門の行政書士の宮武勲が全てのお客様を担当し、親身・丁寧・迅速に対応させていただきます。
初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
毎週、相続遺言の無料のセミナーもやっておりますので、「ちょっと話だけ聞いてみたい」とお考えの方はセミナーへのご参加もお勧めいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。